2019.10.29
# 健康食品

10月29日 人工甘味料「チクロ」が使用禁止に(1969年)

科学 今日はこんな日

地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今日も "サイエンス365days" のコーナーをお届けします。

"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。

1969年の今日、人工甘味料「チクロ」が食品衛生法で認められた「食品添加物」のリストから取り消され、使用禁止となりました。これより数年前にアメリカで発がん性の疑いが認められ禁止に至ったことを受けてのもので、同時に同じ人工甘味料の「ズルチン」も禁止されています。

チクロは、サイクラミン酸(シクロヘキシルスルファミン酸)のナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩の通称で、一般的にはナトリウム塩がチクロとして利用されました。

【図(構造式)】サイクラミン酸ナトリウム(チクロ)
  サイクラミン酸(シクロヘキシルスルファミン酸)の構造式

無色・白色の結晶もしくは結晶性粉末で、砂糖の30~70倍もの甘味を持ちます。水によく溶け、その甘みは酸性のときに特に強くなるので、ジュースの甘味増強や粉末を水に溶く清涼飲料などで、とくに多く利用されました。日本では、ナトリウム塩は 1956年、カルシウム塩は1961年に食品添加物として許可されています。

  低コストのチクロを利用した渡辺製菓の「ジュースの素」は、10袋入り50円、1杯たったの5円で低価格をアピールして、一世を風靡した

チクロの発見は、ある化学者が研究中に口にしたタバコが妙に甘いことに気付いたのが、きっかけと言われています。

ニューヨークのとある病院では、糖尿病患者などの糖質摂取の制限がある入院患者に楽しみを与えたいということで、チクロを利用した飲料を開発したところ大変に好評でした。この飲料を、ノンカロリー飲料として、一般の消費者向けに販売したところ、大ヒット商品となったのです。

  糖質摂取制限のためのノンカロリー飲料から生まれた清涼飲料「No-Cal」のコマーシャル

ところが、それまでチクロは体内で代謝されずにそのまま排出される、と考えられていましたが、1960年代後半にチクロが腸内細菌によって分解され、発がん性物質に変化する可能性が指摘されました。そこで、ラット60匹を使って、体重1kgあたり2.5g相当のチクロを毎日食べさせる、という実験を行ったところ、2年後に8匹で膀胱がんが見つかり、使用禁止になりました。

しかし、その後の追試では、発がん性に否定的な結果が出ています。ヨーロッパ諸国をはじめ、世界にはチクロが禁止されていない国も多くあります。それらの国々からの輸入食品にはチクロが含有されたものもあり、国内で誤って輸入されたそれらチクロ含有食品が回収・廃棄処分になるケースがいまも見受けられます。

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