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ちょっと変わったお弁当屋さん「キッチン突き当たり」のキャラクター"ツッキー"のデザイン。

奈良県生駒市のとある路地の突き当たりにある、ちょっと変わったお弁当屋さん「キッチン突き当たり」。ここには、日々みんなのお弁当や給食をつくっているキッチンの他に、誰でも使えるキッチンや広場があります。
そこには、動けないし話せないけど、静かにみんなを見守る、突き当たりのまもりがみ「ツッキー」がいるらしい。

なぜ、キッチン突き当たりのロゴは、ロゴタイポではなく読みにくいキャラクターなのか。なぜ、ツッキーはまもりがみなのか。今回はそのお話を少しさせてください。

勝山浩二 Coji Katsuyama | monodachi

合同会社オフィスキャンプ デザイナー/アートディレクター。1986年生まれ、大阪市出身。グラフィックを軸にした広告デザインやWEB、プロダクト、ブランディングなどを手がける。地域プロジェクトや企業ブランディングなどを手がけるデザイン事務所を経て、現在は奈良県奥大和地域にフィールドを移しローカルデザイナーとして活動。木材産地で地域にねむる林業や木工産業、農業、地域に関わる起業家たちと共にプロジェクトを進行中。




ちょっと変わったキッチン


キッチン突き当たりは、ちょっと変わったキッチンです。

みんなのお弁当や給食をつくるキッチンの前に、広場があります。ある時はお弁当屋さん、ある時は駄菓子屋さん、お祭りがあったり、朝市ができたり。なんだかワクワクすることがおこったり、おこらなかったりします。

キッチン突き当たりの中には、ふたつのキッチンがあります。ひとつは、みんなのお弁当を作るためのキッチン。もうひとつは、誰でも使えるキッチンです。
おいしいおかずのレシピを先輩から教えてもらったり、バレンタインのお菓子を一緒に作ったり…。いろんなことができそう。みんなでお誕生日会なんてのも良いですね。


突き当たりのまもりがみ「ツッキー」。


大きな通りから少し中に入った路地の奥(突き当たり)に見えてくる三角屋根のかわいらしい建物。ロゴデザインとしては、そのアイコニックな建物の壁面に掲げられるサインから考えはじめました。

ロゴマーク(店名)を主張するためのマークにするのではなく、キャラクター化することで、老若男女だれでも親しみをもってもらえ、また、関係者や店舗で働くスタッフの人たち、みんながこのキャラクターを簡単に融通がきいて使うことができるようにしました。

さらに、それが建物にサインとして付くことで、建物に命が宿ったように見えます。その姿は、まるで、お店の前にある広場を見守る、守神(まもりがみ)のようです。

名前を「ツッキー」と名づけました。

建物にツッキー
看板(親子)ツッキー


こんなにも「突」という漢字に向き合ったのははじめて


わかりにくいかもしれませんが「ツッキー」は、店名の頭文字である「突」という漢字をモチーフにして、極力単純化してつくられたキャラクターです。

「突き当たり」以外では、例えば「突撃」「突然」「追突」などなど、何やら攻撃的な言葉に付れられることが多いため、はじめは漢字の「突」に対してのイメージは、強そうでした。
しかし、キッチン突き当たりのイメージはその真逆です。みんなに優しくて、親しみやすくて、明るい。

文字がもつこのイメージを反転させることが、デザインの肝でした。

スケッチを繰り返し描いているうちに、「突」はウかんむり、ハの字、大きい、の3つに分割できることに気づきます。これは、頭・目・口という顔をデフォルメして描くことができるかも!という発見から、どんどんツッキーができあがってきます。

ツッキーが生まれるまで

三角屋根の建物をイメージできるように、ウかんむりは屋根に(と、お子様ランチみたいな旗を付けてあげた)すると、かわいい。
目は、喜怒哀楽の表情をつけやすいため、デフォルトは丸目にする。笑ったり泣いたり困ったり怒ったりすると目が変わります。かわいい。
ミッフィちゃんのおちょぼ口みたいでかわいい。


生駒谷の七森信仰(七モリの伝承)


日本全国にある森を神とする信仰の中でも一際珍しいのが、「生駒谷の七森信仰」というものがあります。
生駒谷に存在するそれぞれの集落に七つずつモリが存在するという考えです。

森を守り続けている人たちは、森を信仰と結びつけ恐れと敬いの心をもち、森の木を伐ると激しい祟りを受けると信じられています。
今では、「自然を守る」ことは、自然保護やら街の景観の観点から当たり前のようになりつつある考え方ですが、人間を中心に考えすぎない自然界を俯瞰した考え方ですね。

その力をお借りして、ツッキーには、地域の人たちを見守るやさしい神様(まもりがみ)になってもらうことにしました。


手づくりの公共


誰かから誰かへ提供する、これまでの一般的なお店のような一方通行な需要/供給の関係性ではなく、必要なことやもの・やりたいこと・楽しそうなことを「みんなで考えて」「みんなで実践する」場所。ツッキーがもつキャッチーな印象の力によって、ここ「キッチン突き当たり」がそんな場所になることを願っています。

それでは、今回はこのあたりで。ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。また機会があれば他の記事も読んでください。




Client: Mugen
Creative Agency: Office Camp llc.
Creative Director: Takashi Yoshidada
Creative Director: Daisuke Sakamoto
Shop Designer: KOBA
Art director/Designer: Coji Katsuyama


https://kitchen-tsukiatari.com/

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