Q 冬の美味「かぶら蒸し」の名店は?

A「『割烹やました』のひと椀は出汁の味わいが格別です」
ー近藤 幸さん

割烹やました
撮影=高嶋克郎

一之船入など歴史的名所もある高瀬川沿いの道を御池通から北へ。木屋町通に面した「割烹やました」は、数少ない正統派の割烹です。いまでこそ、品書きも置くようになりましたが、かつてそれもなかったそう。

料理人歴60年という店主の山下茂さんに相談して、旬の魚や野菜を料理に仕立ててもらうのです。冬ならば、牡蠣鍋やふぐ鍋といった小鍋のほか、近藤さんが薦めるかぶら蒸しは、ぜひとも味わいたい一品。客前で蒸し上げて、熱々で出されるご馳走です。

きめ細かでこの時季甘みを増す聖護院蕪をすり下ろして卵白のメレンゲと和え、きくらげを混ぜ込み具材の上に。かぶの下に潜むのは、甘鯛や海老、百合根、ぎんなんといった冬の美味。

蒸し上がったあと、湯葉を加えた香り高い銀あんがたっぷりとかけられます。口に入れるとかぶの優しい甘みが広がり、出汁の香りがふわっ。かぶの上に飾られたにんじんの色合いも鮮やかで、蓋を開けた途端に、思わず歓声を上げてしまいます。

【おすすめメモ】
かぶら蒸しをはじめ、「割烹やました」さんの蒸し物は、蓋を開けたときの湯気を楽しむところから。お出汁のおいしさ、きめ細かな舌触りは格別です。なんとも幸せな気持ちになります。

割烹やました
撮影=高嶋克郎

DATA
営業時間/11時30分~13時30分、17時~22時(いずれもL.O.)
定休日/月曜
料金/昼5,445円~、夜14,520円~、かぶら蒸し2,680円~、そのほかアラカルトあり
tel.075-256-4506
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京都府京都市中京区木屋町通二条下ル上樵木町491-3

割烹やました [木屋町御池]


Q 底冷えの京都で味わいたい「鍋」 は?

A「『水だき萬治郎』の水炊き鍋は白濁したスープが滋味深く絶品」
ー細尾多英子さん

水だき萬治郎
撮影=高嶋克郎

1948年の創業以来、水炊きコースで客をもてなす知る人ぞ知る名店。祇園北側、辰巳神社そばの路地を入った突き当たり、趣ある町家がその店です。料理は、先付の肝煮が出て、まずは白濁したスープを一杯。

「鶏ガラを10時間ほど煮込んで寝かせ、上に煮凝る脂を何度も取り除いて取る白濁した出汁が一番の自慢です」と3代目女将の谷口眞輝子さん。しょうがと少しの塩を加えて味わうと、深くて清らかな鶏の旨みが体に染みわたります。大山若鶏や白菜など冬の野菜がたっぷり入った水炊きを堪能し、締めの雑炊。

女将さん曰く、「この雑炊がメイン料理」。歴史を感じる空間と懐かしい味わいの水炊きに、心身が癒やされます。

【おすすめメモ】
奇をてらわない、昔ながらの水炊きが味わえます。巽橋など名所からも近い、祇園の路地奥にある風情たっぷりの立地も魅力。水炊きは10月から5月まで限定。春夏はお昼に親子丼がいただけます。

水だき萬治郎
撮影=高嶋克郎

DATA
営業時間/17時~22時(19時30分最終入店) ※夜営業は10月~5月。
定休日/年末年始
料金/水炊きコース8,250円(1人前、サ別)※写真は4人前
tel.075-561-1654
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京都府京都市東山区新橋通大和大路東入ル元吉町58

水だき萬治郎 [祇園北側]


A「『権太呂』のうどんすきは京都らしい風情も一緒に味わえます」
ー小宮理実さん

権太呂
撮影=高嶋克郎

1910年に大阪で創業し、1960年に麸屋町錦で店を開いた麺処「権太呂」。現在は四条の本店も含め3店舗を構えます。京都の水と羅臼昆布、うるめいわしや鯖など吟味した節で取る出汁が味の要です。仕上がった出汁は、美しい琥珀色を帯びることから、「黄金の一汁(ひとしる)」と命名されるほど。

この出汁を用い、錦市場から仕入れる活車海老や新鮮な蛤、地の白菜や水菜などを具材にした「京風うどんすき 権太呂なべ」は看板商品。まずは、かしわ(鶏肉)や海老、巻き湯葉、しいたけなど出汁を含んだ具材を味わいましょう。ころ合いを見計らい、ツルッと喉越しのいいゆでたてのうどんが運ばれます。

数寄屋造りの本店には、テーブル席のほか座敷や広間もあり、宴の場としても重用されています。

【おすすめメモ】
「権太呂」さんの名物鍋は、京都人のお歳暮の定番としても知られる品。京都らしい風情ある店内でいただくのがまた格別です。生きた海老や新鮮な具材を引き立てる出汁のおいしさを堪能したい。

権太呂
撮影=高嶋克郎

DATA
営業時間/11時~21時(L.O.)
定休日/水曜
料金/権太呂なべ5,000円(1人前)※写真は2人前
tel.075-221-5810
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京都府京都市中京区麩屋町通四条上ル

権太呂 本店[麩屋町四条]


Q 1万円前後でおすすめの「和食」は?

A 「『京旬いちえ』は、手ごろな価格帯なのにどれもきちんとおいしい」
ー佐々木まなびさん

京旬いちえ
撮影=高嶋克郎
錦雲豚のクレープ包み1,800円(手前・2名分)と、九条ねぎと丹波しめじのおひたし900円。

御所南で開業して15年、地元京都人に愛される和食店です。祇園の割烹などで修業を積み、2003年に独立してバーや居酒屋などを立ち上げた店主の小谷昇平さんの豊富な経験が要です。

「地野菜やブランド豚など食材の持ち味を大切にした和食を存分に味わっていただきたい」と言います。その言葉通り、九条ねぎと丹波しめじのおひたしや錦雲豚(きんうんとん)のクレープ包みなど、いずれもお値打ち価格で分量もたっぷり。

昼は、インドカレーをベースにしたスパイスカレー専門店に。脂分を控えた本格カレーに魅せられ、夜の締めに注文する人も多いそうです。

【おすすめメモ】
きちんと丁寧に作られたおいしい料理が、手ごろにいただける幸せ。烏丸御池など繁華街からもすぐの夷川通にあり、急に思い立って外食に出るときなどに重宝します。ご主人の温かな人柄も人気の理由。

京旬いちえ
撮影=高嶋克郎

DATA
営業時間/11時~14時(カレーランチ)、17時30分~22時(L.O.)
定休日/日曜、ランチは不定休
料金/昼チキンカレー900円~、夜6,100円~、アラカルトあり
tel. 075-231-1122
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京都府京都市中京区夷川通高倉東入ル百足屋町146

京旬いちえ[御所南]


A 「『四季なか村』ではコースでも7,480円からと良心的」
ー小宮理実さん

四季なか村
撮影=高嶋克郎
小かぶと雲子、車海老の白味噌椀(手前)と鯛と大根とからすみのご飯は、夜11,000円のおまかせの品。

北山の「乃し」や「祇園なん波」など京都の人気店で経験を積んだ中村真規さんが営む和食店。三重県の実家で作る大根や白菜など有機野菜を生かし、滋味溢れる料理に仕立てます。昼は5~7品、夜は7~8品の季節のお料理と水物、和菓子というコース。

冬は造りや白味噌椀、かぶら蒸しなど温かな料理、季節の炊き込みご飯と充実の内容です。なかでもリクエストが多いのが、鯛と大根、からすみの土鍋ご飯。みずみずしい大根がとろりとしてご飯に馴染み、お代わりしたくなるおいしさ。

昼は3,850円~とお手ごろ価格で、季節ごとに訪ねたくなります。

【おすすめメモ】
気さくなご主人のお人柄や、優しい味わいのお料理に惹かれて通っています。昼、夜ともに季節ごとに内容も変わるので、毎回、今日はどんな料理をいただけるだろうかと楽しみになります。

四季なか村
撮影=高嶋克郎

DATA
営業時間/12時~13時、18時~20時(いずれも最終入店)
不定休
料金/昼3,850円~、夜7,480円~
tel.075-841-8515
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京都府京都市上京区丸太町通千本東入ル中務町491-40

四季なか村 [西陣]


A 「『而今 平たて(じこん ひらたて)』の“ハーフおまかせ”がありがたい」
ー細尾多英子さん

而今 平たて
撮影=高嶋克郎
手前は「のどぐろと冬野菜の鍋仕立て」、奥は「寒ぶりのお造り辛み大根とうに添えとろみ醬油」各3,000円~。

2022年の開業ながら、すでに京都人の馴染み店になっているのが「而今 平たて」です。安定感ある王道の味から、創作性もある新和食まで、幅広い料理を一品で注文できるのも、その理由でしょう。

店主の平舘亮祐さんは、料亭「西陣魚新」で基礎を身につけ、「余志屋 別館」では料理長も務めた気鋭の料理人。その料理は日々上質さを増していると評判です。冬に脂がのる氷見の寒ぶりは、ピリッとした香味がある辛み大根を添え、さらりと味わえるお造りに。

のどぐろなど、冬に食べたい味も豊富ですので、迷ったら分量なども含め、平舘さんに相談を。

【おすすめメモ】
最初の2~3品をおまかせでいただき、そのあとはアラカルトで好きな一品料理が楽しめる、“ハーフおまかせ”がおすすめ。到着してすぐにお料理を出していただけます。季節の白和えがとっても美味です!

而今 平たて
撮影=高嶋克郎

DATA
営業時間/17時~22時(土・日曜、祝日は15時~)
定休日/月曜
料金/夜おまかせ9品16,000円~、アラカルトあり
tel.075-221-2288
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京都府京都市中京区少将井御旅町352-1ラフト御所南1F

而今 平たて [御所南]


Q「洋食」をいただくなら?

A「『グリル小宝』のオムライスは飽きることのない味わい」
ー山内万丈さん

グリル小宝
撮影=高嶋克郎

平安神宮の東、岡崎の観光名所からも近い洋食店。1961年の創業以来、変わらぬ味で京都人に愛されてきました。

海老フライやハンバーグなど、お馴染みの洋食が揃うなか、メニューの要となるのが2週間をかけて作るデミグラスソースです。このソースがたっぷりかかったオムライスは、店を代表する人気メニュー。大、中、小と3種類あり、中サイズでもご飯は700グラムというからかなり大盛り。

豚肉と牛肉、玉ねぎと一緒に炒めてケチャップで味つけし、薄焼きの卵でくるんだ昭和スタイル。食べ始めると、スプーンが止まらなくなる絶品です。

【おすすめメモ】
オムライスといえば「グリル小宝」。皿の縁までかかったデミグラスソースに深いコクがあって、ビッグサイズのご飯もあっという間に平らげてしまいます。ハヤシでなく「ハイシライス」と呼ぶひと品も人気。

グリル小宝
撮影=高嶋克郎

DATA
営業時間/11時30分~20時30分
定休日/火・水曜
料金/オムライス小750円、オムライス中1,150円、「ハイシライス」1,450円ほか
tel.075-771-5893
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京都府京都市左京区岡崎北御所町46

グリル小宝 [岡崎]


A 「『はふう 本店』のカツサンドはお肉専門店ならではの美味」
ー近藤 幸さん

はふう 本店
撮影=高嶋克郎

御所南の閑静な住宅街に1999年開業した肉料理のレストラン。「たとえブランド牛でなくても、おいしい肉があることを知ってほしい」という思いから、産地にこだわることなく、その時季一番の牛肉を選りすぐります。

手ごろな値段で上質な和牛のステーキが味わえるほか、ステーキの端肉がごろごろ入ったハヤシライス、肉厚のカツサンドなど、魅力的なメニューばかり。肉汁したたるカツサンドは、創業以来のロングセラーで、サクサクした衣と上質なヒレ肉の旨みを堪能できます。

京都土産や新幹線のお供としてテイクアウトする人も多い一品。

【おすすめメモ】
お肉料理屋さんならではのステーキやカツサンドは間違いないお味です。ハヤシライスやタンシチューもとてもおいしく、いつ訪ねてもその上質さやリーズナブルさに感動してしまいます。

はふう 本店
撮影=高嶋克郎

DATA
営業時間/11時30分~13時30分、17時30分~21時30分(ともにL.O.)
定休日/水曜
料金/カツサンド2,300円、ランチ(平日のみ)1,000円、夜コース8,000円~
tel.075-257-1581
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京都府京都市中京区麩屋町通夷川上ル笹屋町471-1

はふう 本店 [麸屋町夷川]

A「『浅井食堂』のハンバーグのデミグラスソースは忘れられない濃厚さ」
ー井村佳代子さん

浅井食堂
撮影=高嶋克郎

いまはなき老舗洋食店に15年勤めて腕を磨いた浅井幸雄さんが、2014年に独立。喫茶店だったレトロな店を改装して開業しました。ハンバーグやクリームコロッケなど王道洋食のほか、ローマ風ピザやシャルキュトリーなどワインに合う料理も揃います。

看板メニューの「浅井食堂ハンバーグ」は、国産牛肉と豚肉を合わせ、つなぎは少し。肉の風味と濃厚なデミグラスソースの相性も抜群で、老若男女に人気です。

ランチタイムは、サラダやパン、ワインが付くセットもあってお得。特製デミグラスソースは購入もでき、自宅でも本格洋食を楽しめます。

【おすすめメモ】
下鴨神社からもすぐ。閑静な住宅街にある食堂は、街に愛されるお店です。ソムリエでもある浅井さんのワイン選びも確かで、夜はシャルキュトリーでワインをじっくり楽しむことも。

浅井食堂
撮影=高嶋克郎

DATA
営業時間/11時~14時、17時30分~20時(ともにL.O.)
定休日/月・火曜
料金/浅井食堂ハンバーグ1,500円、国産牛ステーキ(200g)3,400円~ほか
tel.075-706-5706
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京都府京都市左京区下鴨松ノ木町43–1富山コーポ 1F

浅井食堂 [下鴨]


Q フレンチとイタリアンの注目店は?

A「『MOKO』でオーガニック食材を使った見目麗しいフレンチを」
ー井村佳代子さん

moko
撮影=高嶋克郎
熟成クエのグリルと大原野菜(上)。小蕪とスモーク鰆の前菜(下)。小蕪の下に鰆が潜む。

「本格派でいて独創的」と食通の間で注目を集めている「MOKO」。店主のモコ アレクシィさんは「ル・タイユヴァン」で経験を重ねたあと、日本人の妻・綾夏さんとともに2019年日本に移住。2023年5月に御所南の町家で自店を開業しました。

独創性のひとつが、肉や魚のドライエイジング。店内の乾燥冷蔵庫で牛肉だけでなく、羊肉やくえなど魚も熟成させ、味わいを膨らませます。ほかにも、鰆は燻製に、小かぶは塩釜焼きにと手間暇かけた料理が続くコースは秀逸。

1階には個室もあり、子ども連れも可能という、ありがたい新店です。

【おすすめメモ】
大原の朝市で仕入れるオーガニック野菜や、一頭買いする鹿などナチュラル食材を使ったフレンチ 。広々とした町家を改造した空間やインテリアも素敵。体によいお料理もセンスがよく、とてもおいしい。

moko
撮影=高嶋克郎

DATA
営業時間/12時~13時30分、18時~19時30分(ともにL.O.)
定休日/日・月曜、火曜の昼
料金/昼夜ともにコースのみ。昼7,500円、夜15,000円。
tel.075-252-1523
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京都府京都市中京区玉植町235–2

MOKO [府庁前]


A 「『フルラン』は多彩な料理で野菜がおいしい!」
ー佐々木まなびさん

フルラン
撮影=高嶋克郎
蝦夷鹿のステーキ(上)は、ディナーのメインのひと皿。野菜たっぷりサラダ(下)はランチの前菜。

2023年9月に骨董街・寺町通からもすぐの御所南エリアに開業した「フルラン」。オーナーシェフの水谷健太さんは、北イタリアでの修業のほか、京都のイタリアンの名店でも腕を振るった力量ある料理人です。

開業前にはフレンチ店でも経験を積み、独自のコース料理を生み出しました。「季節料理に北イタリアのフリウリ料理をときどき組み込んだ10品ほど」と水谷さん。ランチの前菜は、大原に自生するクレソンなど野草やハーブをたっぷり10種類以上使ったもの。

夜のメイン、蝦夷鹿のグリルにも季節野菜が添えられ、絶妙なハーモニーを奏でます。

【おすすめメモ】
京都のイタリアン出身の経験豊かなシェフ。独立されて、よりご自分らしい店作りや料理を実現されました。野菜がおいしく、ちょうどよい量で面白いメニュー仕立て。ランチもお値打ちです。

フルラン
撮影=高嶋克郎

DATA
営業時間/11時30分~14時、18時30分~21時
定休日/木曜
料金/昼コース3,300円~、夜コース11,000円~  要予約。
tel.075-600-9766
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京都府京都市中京区夷川通寺町西入ル丸屋町693ハオスハオゼ 1F

フルラン [寺町夷川]


Q さくっとランチの絶品は?

A「『祇園権兵衛』の親子丼」
ー小宮理実さん

祇園権兵衛
撮影=高嶋克郎

麺処「祇園権兵衛」の創業は1927年。祇園北側という場所柄、歌舞伎俳優や花街の芸舞妓も通う名店です。毎朝手間暇かけて丁寧にひく出汁のおいしさに定評があり、きつねやしっぽくといった定番の麺類はもとより、丼物も人気。

なかでも自慢の出汁で地鶏を煮込み、たっぷりの卵でとじた親子丼は、多くの人が注文する名物ともいえる品。半熟加減が絶妙なふわふわとろとろの卵が鶏肉やご飯と絡まり、えも言われぬまろやかな旨味を生み出します。

【おすすめメモ】
親子丼は卵がとろとろで本当に美味。山椒が振ってあり、絶妙なアクセントになっています。ほどよい分量の天ざるもおすすめです。

DATA
営業時間/11時30分~20時
定休日/木曜
料金/親子丼1,800円、鍋焼きうどん2,500円、天ざる2,800円
tel.075-561-3350
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京都府京都市東山区祇園町北側254

祇園権兵衛 [祇園四条]

A 「『末廣』のちらし寿司」
ー近藤 幸さん

末廣
撮影=高嶋克郎

約200年前の天保年間にお惣菜などを販売する煮売り店として創業。昭和になってから徐々に京寿司専門店へと業態を変えたそうです。

当時から販売する「京風ちらしずし」は、「見て美しく、食べておいしい」を信条に、長年作り続け、愛されてきた看板商品。干瓢や椎茸を混ぜ込んだ酢飯の上に、もみ海苔と錦糸卵を敷き詰め、海老、焼き穴子、高野豆腐、いんげんなどを彩りよく盛り付けたもの。

冬季限定の熱々で出される蒸し寿司も、味わいたい一品です。

【おすすめメモ】
「京風ちらしずし」は持ち帰るのもいい。冬は蒸し寿司を店内で味わうのがおすすめです。

DATA
営業時間/11時~15時(持ち帰りは~18時) 売り切れ次第閉店
定休日/月・火曜
料金/「京風ちらしずし」2,000円
tel.075-231-1363
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京都府京都市中京区寺町通二条上ル要法寺前町711

末廣 [御所南]

A 「『すし善』のちらし寿司」
ー細尾多英子さん

すし善
撮影=高嶋克郎

「すし善」の創業は1938年。初代が京都の料理店で修業を積み開業しました。現在は2代目の西村善明さんと3代目の健吾さんが切り盛りします。

京都人はもとより、最近では海外からの客も目当てにする名物が、はんなり美しい「ちらし」。ふわふわの錦糸卵を全面に敷き詰めた姿はSNSでも話題。錦糸卵の下には鮪、鯛、はまち、蛸、煮穴子など寿司ネタがびっしりと並び、海苔を敷いた酢飯がそのまた下に。酢飯とネタ、卵のバランスが絶妙で、また食べたくなります。

【おすすめメモ】
美味なうえ、ご家族による連携で、サッと出してもらえて時間がないときも助かります。

DATA
営業時間/10時~18時(売り切れ次第終了)

定休日/土・日曜、祝日
料金/「ちらし」1,700円
tel.075-221-3848
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京都府京都市中京区三条通新町東入ル衣棚町41-2

すし善 [烏丸三条]

A 「『そば 北山権兵衛』の鴨せいろ」
ー井村佳代子さん

そば 北山権兵衛
撮影=高嶋克郎

創業は昭和初期、国産蕎麦粉を使って毎日手打ちする二八蕎麦がお店の自慢です。「寒い日にはこれ」と井村さんが薦める冬限定の鴨せいろも、ファンが待ち望む一品です。

焼いた鴨肉とつくねが入った熱い付け汁で、冷たい蕎麦を味わいます。せいろ蕎麦ならではの食感や香りを堪能しつつも、温かな出汁を味わえるのが魅力。鴨肉の旨みを含んだ汁に九条ねぎの甘みが溶け出して、蕎麦の風味がいっそう引き立ちます。

【おすすめメモ】
お蕎麦の前は、甘くてふわふわの卵焼きやお揚げの甘煮と一緒に日本酒をいただくのも。

DATA
営業時間/11時~14時30分、17時~20時
定休日/木曜
料金/鴨せいろ1,700円
tel.075-791-4534
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京都府京都市左京区下鴨南芝町44-1

そば 北山権兵衛 [北山]

A 「『とんかつ がんちのヒレカツ定食
―佐々木まなびさん

とんかつ がんち
撮影=高嶋克郎

店主の中野聡一さんが洋食店で修業後、とんかつ専門店を開いて36年。「開店当時から食材や調理法など何も変えていない」と言います。

鹿児島の黒豚に大阪から取り寄せる生パン粉を付け、コシの強い米油で揚げるそう。カラッと仕上げる秘訣は、多めの油と揚げ時間。「油の音を聞けば、揚がり具合がわかる」と中野さん。

佐々木さんおすすめのヒレカツは、衣が薄くサックリ、嚙み締めると甘い脂が広がります。付け合わせのサラダや白味噌のお味噌汁も美味。

【おすすめメモ】
メニューはヒレカツ定食など5品ほど。米油で揚げているのでもたれず、ぺろりといただけます。

DATA
営業時間/11時~13時30分、17時~19時30分(ともにL.O.)
定休日/日曜、不定休あり
料金/ヒレカツ定食1,300円
tel.075-551-9029
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京都府京都市東山区泉涌寺五葉ノ辻町13-14

とんかつ がんち [泉涌寺]


Q フードもおいしいバーは?

A「和洋の本格派料理が味わえる大人のバー『酒陶 桺野(やなぎの)』がおすすめ」
ー佐々木まなびさん

酒陶 桺野
撮影=高嶋克郎
〈左〉洋風おでん1品400円~。燗酒1合1,100円~。〈右〉よこわ(黒鮪)のヅケともんごういかのお造り。造り1品1,000円~。柚子皮を散らしたいかには、すっきりしたロワールのリースリング、よこわには赤ワインを。

「ほどよい料理とお酒でくつろいでいただければ」と言うのは店主の柳野浩成さん。お造りや洋風おでんなど多彩な料理を肴に、カクテルだけでなくワインや日本酒など、好みのお酒を味わえます。

バーとはいえ、その料理のレベルの高さは京都人の知るところ。なかにはここで夕食をという人もいるほどです。もうひとつ、この店に通いたくなるのが、室礼や調度、器の洗練度。茶室を思わせる空間で骨董など上質な器でいただく料理やお酒は格別。

食事をメインにというときは、2023年に開業した姉妹店「ととよし」で和食コースを味わうのもおすすめです。

【おすすめメモ】
バーではお酒だけをいただくことも多いのですが、料理もおいしい「酒陶 桺野」さんは別。少人数ならカウンター席でゆっくり、4人以上ならお庭の見える奥の席で肴も四季の風情も楽しみます。

酒陶 桺野
撮影=高嶋克郎
〈左〉牛すね肉の赤ワイン煮込みパイ包み2,200円。〈右〉店内

DATA
営業時間/17時~24時
不定休
※カクテル、ワインなど1,100円~
tel.075-253-4310
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京都府京都市中京区釜座町33

酒陶 桺野 [三条釜座]

A「『クローム ナチュラルワイン ライフ』なら自然派ワインと相性抜群の料理をいただけます」
ー山内万丈さん

クローム ナチュラル ワイン ライフ
撮影=高嶋克郎
〈右上〉北海道仙鳳趾(せんぽうし)の牡蠣とマッシュルームのパン粉焼き ブルギニョンバター2,000円。〈右下〉ラフランスとKAWABAリコッタチーズの白和え900円、ロワールの白1,200円~。〈左〉木下牧場のブレザオラ(近江牛の生ハム)2,400円にはイタリアのサンジョベーゼを合わせる。2,200円~。

ワイン好きが高じて会社員から飲食業界に転職したオーナーソムリエの関谷英之さん。薪焼き料理とワインの店「キルン」でマネージャーとして勤めたあと、2020年10月に府庁前に開業しました。

関谷さんが目指したのは、無農薬や有機栽培で造られるナチュラルワインをおいしく味わってもらうこと。こうしたワインに寄り添う料理を用意します。

たとえば、ロワールのソーヴィニヨンブランには、ラフランスとチーズの白和え。フルーツのニュアンスのあるワインがマッチするそう。木下牧場の生ハムや滋味ある牡蠣のパン粉焼きなど料理も多彩。

【おすすめメモ】
店内に足を一歩踏み入れただけで、素敵なお店だとわかります。この空気感は、スタッフの皆さんの心地よいサービスが作り出すものでしょう。気心知れた友人と、ゆっくり語らう場にぴったりです。

クローム ナチュラル ワイン ライフ
撮影=高嶋克郎

DATA
営業時間/18時~25時
定休日/月曜、不定休あり
tel.090-8537-2104
Google mapで確認

京都府京都市中京区大炊町201-3 新町ロイヤルハイツ1F

クローム ナチュラル ワイン ライフ [府庁前]


ご推薦くださった京都人の方々


井村佳代子さん[「イムラ アート ジェム」ディレクター]
いむらかよこ●「ホテルオークラ京都」にある、国内外からセレクトしたジュエリーをはじめ、デザイナーズジュエリー、アンティークガラスを扱うショップのディレクターを務める。


小宮理実さん[料理家]
こみやりみ●京都・室町の生地問屋に生まれ、昔から伝わる知恵とともに、おばんざいや行事食などのレシピを紹介。本物の食を子どもたちに伝える食育にも力を注いでいる。


近藤 幸さん [「Sophora」ギャラリスト]
こんどうゆき●京都で1903年から続く薬店などを営む「延寿堂」の4代目。その一事業としてギャラリーを運営。用の美を備えた器を扱い、器と料理の調和も探求。


佐々木まなびさん[「雨柳デザイン事務所」代表]
ささきまなび●アートディレクターとして、独特の世界観をもつ文具やテキスタイルなどを数多く手掛ける。日本の紙文化を伝える新ブランド「mucura」を発表したばかり。


山内万丈さん[「山内財団」専務理事]
やまうちばんじょう●3代目社長・山内溥の孫として任天堂創業家に生まれる。旧本社社屋を改築したホテル「丸福樓」ほか、現在は五条・菊浜エリアの活性化を手掛ける。


細尾多英子さん
[「HOSOO」ディレクター]
ほそおたえこ●1688年京都西陣にて創業した「HOSOO」の代表・細尾真孝さんとともに世界に西陣織の素晴らしさを発信。近年は西陣織の洋服やシルクのコスメも開発。


撮影=高嶋克郎 取材・文=中井シノブ 編集=吉岡博恵 須田秀子(婦人画報編集部)

『婦人画報』2024年2月号