障害や悩みを持つ人の生活・就労支援で成果 5年を迎えた東久留米の「リカバリーカレッジ」

投稿者: カテゴリー: 健康・福祉 オン 2023年12月26日

 障害や悩みを持つ人たちが安全・安心に過ごせて、生きて行くうえでのスキルを学び、地域の人たちと交流する―そんな場が東久留米市にある。精神障害者の生活や就労を支援する一般社団法人「Polyphony(ポリフォニー)」(時田良枝代表理事=東久留米市在住)が運営する「リカバリーカレッジ・ポリフォニー」だ。

 

ポリフォニー

事務所でスタッフと打ち合わせをする時田良枝さん(右から2人目)

 

 障害者の自立訓練(生活訓練)は就労支援が一般的だが、リカバリーカレッジは就労に至らない人たちが地域社会に不安なく一歩を踏み出せるようにサポートすることを最優先にしている。

 これまで100人以上の人たちが卒業し、長期・短期の労働に就いており、障害者雇用の枠で正社員になった人もいる。

 リカバリーカレッジは、イギリスで始まった取り組みで「生きづらさを抱えたひとなら誰もが社会や人とつながることのできる場」という意味だ。この考えに基づき、フィンランドで開発された手法「オープンダイアローグ」(利用者の意思や希望を最優先し、利用者とスタッフが対等の立場でプログラムを作っていく)を運営の基本にしている。現在、通所・在宅の利用者は合わせて36人いる。

 リカバリーカレッジの1日の流れはこうだ。9時30分に始まり、プログラムは午前が10時30分~12時、1時間30分の昼休みを挟んで午後は1時30分から3時まで。終了は3時30分。プログラムは、「4つの知る」-個性を知る、からだを知る、暮らしを知る、就労・社会参加を知る―からなる。利用者の個性、障害や悩みの種類、障害や症状の軽重に配慮したプログラムが作られている。

 プログラムは1か月分のスケジュールが4色で色分けされており、それぞれのプログラムの内容が一目でわかる。内容も体操やバドミントンなどのスポーツ、ヨガ、マージャンなど各種ゲーム、読書、朗読、動画撮影、コミュニケーションの取り方、自己表現の方法、カレー作りやパンケーキ焼きまで多彩だ。

 畑での農作業、パンケーキの袋詰め、カフェでのボランティア、チラシのポスティングなど短時間の就労体験もある。協力農家の畑で採れた野菜で作ったピクルス、プログラムの中で作った靴下とバッジも販売している。

 プログラム実施中は、利用者の自主性に任せ、スタッフはサポートに徹する。嬉々として時には歓声を上げてプログラムを楽しむ利用者を、スタッフはそばでやさしく見守るというのがリカバリーカレッジの日常風景だ。金曜日の最後のプログラムでは、ボランティア鍼灸師のマッサージも受けられる。

 リカバリーカレッジは卒業生たちの居場所でもあり、卒業生たちは時々気楽に立ち寄り利用者と交流する。

 障害や悩みを持つ人たちが安全・安心に過ごせる社会を作るには、こうした人たちへの差別や偏見をなくす取り組みが必要だ。リカバリーカレッジは創立以来これまで、月に1回地域住民を対象にした無料の講演会を開いてきた。精神科医や臨床心理士による障害者、トラウマなどの理解のための講演会、LGBTQ、障害者年金などの学習会などだ。精神科医の斎藤環さんの講演会「オープンダイアローグってなんですか?」には100人以上の参加者があった。リカバリーカレッジの取り組みにより、障害や悩みを持つ人たちへの地域住民の関心と理解が着実に広がっている。

 時田さんは作業療法士で、精神科病院や障害者就労支援の事業所で相談支援専門員として長年働いた経験がある。その経験の中で、就労する以前の段階の人たち-社会に出られない、人とかかわることができないで悩み苦しんでいる人たちが多くいる、そうした人たちに支援の手が差し伸べられていないことに何とかしたいとの思いを抱き続けてきた。

 そして5年前、「就労する以前の段階で悩み苦しんでいる人の居場所がないなら、自分が住んでいる地域で作ればいい」とポリフォニーを立ち上げた。

 ポリフォニーは事業形態としては精神障害者自立訓練(生活訓練)のための事業所なので、利用者一人ひとりのニーズに合った利用時間・期間を設定できるようにするには、障害者雇用促進法に基づく就労継続B型事業所を作る必要がある。

 「当面はリカバリーカレッジの存在と取り組みを多くの人たちに知ってもらう活動を強め、利用者をもっと増やしたい」と今後の抱負を話す。

 時田さんはまた「福祉事業は医療と比べても必要度が高く厳しい仕事なのに働く人の報酬は低い。働く人の労働条件を改善し事業を充実させるうえでもB型事業所を実現させたい。そのためにはお金が必要です。地域のみなさんから寄付などでサポートがあればありがたい」と訴える。

問い合わせ=一般社団法人Polyphony
〒203-0014 東京都東久留米市東本町16番2号 カーサブランカ久仁107
Tel 042-430-2199 Fax 042-427-5196
E-mail:polyphony@jcom.zaq.ne.jp
営業時間 9時30分~15時30分(月曜日~金曜日、土日祝日は休み)
(鈴木信幸)

 

 

鈴木信幸
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